食とは、他の命を頂くことでしか存(ながら)えることが出来ない、人間の命を繋ぐ術(すべ)の一つです。
2020年以降、日本中で魚食だけでなく実食のある食育授業全般に対し、コロナによる自粛モードが抜け切らないまますでに5年以上。ようやく学校での「食べるイカの解剖」を再開することができました。
今回の実施校は「埼玉県立春日部高校学校」。
理科生物の担当教諭である中村先生からご依頼があり、課外活動『サイエンスカフェ「おさかなマイスターって何ですか?~魚食とイカの話」』にて、「食べる!イカの解剖実習」を日本サイエンスコミュニケーション協会(JASC)の助成により行いました。
余談になりますが、中村先生は「JASC認定サイエンスコミュニケーター」であり、さらには「わな猟師」でもあります。
「人々が自然と科学が共存する持続可能な社会を育むために、誰もが科学について主体的に考えて行動できるきっかけを提供し、人と人あるいは科学と社会をつなげる。」というJASCの考えもあり、解剖実習とはいえ「命を粗末にせず無駄なく頂く」という当協会「食べる・いか解剖」に賛同・お声がけくださり、「食」の本質を考え伝える仲間との機会が持てたことを大変喜ばしく思っています。
毎年の実習・イベントで使うイカは石川県漁協小木支所からの「船内一尾凍結いか」。2015年に第1回「食べる!イカの解剖」を行った際、一箱に入るイカのサイズは23尾から25尾でした。
そこからはイカの漁獲量の減少と共に年々個体のサイズも小さくなり、2018年には一箱の尾数は26から30尾に増えました。個体が小さくなるので数が増えることになります。
10年経った今回はなんと36尾から40尾と更にサイズが小さくなりました。イカがこれ以上小さくなると、この箱のサイズ表記も変更を余儀なくされ、それよりも解剖が難しくなってしまいます。
今回、口球からスポイトで流し込んた醤油がどの様に各臓器を通って肛門から排出されるかを見る際、スポイトに対して食道が細すぎて破れてしまうことが相次ぎました。
初めての高校での実習、しかも男子校。これは是非とも「一人で料理」のきっかけにしてもらいたい!
そこで料理指導の大貫さんが「簡単で・美味しく・栄養価も高い」、これまでの実習やイベントでも人気の高かった「イカの蒸し物・梅肉ネギソース」を選びました。後出の「アンケート結果」で、今回もまた高評価であることがわかります。
女子高生相手でしたら「映え」も盛り込みますが、今回は蒸したイカに材料を切って混ぜただけのソースを乗せた一品。せっかく覚えてもらうなら、たまに作る「手間のかかる豪華な料理」より、シンプルに「美味しい」「簡単」「また作りたい!」と思ってもらえるレシピを使いました。喜んでいただけて嬉しい限りです。